お客様のクレームに対する見解書

製品が故障したり、不具合が見つかった場合の報告は、市場品質管理係の重要な仕事です。
報告のしかたによっては、お客様を怒らせたり、必要のない責任を負ってしまう可能性がありますので、注意が必要です。
この記事では、どのような考え方で報告書を作成するのかを解説します。

見解書

見解書とは、故障などの物事に対する自社の考え方、見解を示す文書です。多くの場合、お客様からのクレームに対して、会社としての考え方を示す文書です。
見解書の目的は、自社の考え方、見解をお客様に納得してもらうことです。そのためには、結論を導いた根拠を論理的に示さなければなりません。
見解書を提出して、問題の原因を理解していただき、対策について納得していただけたら、その見解書は目的を達成したことになります。

表紙

原則として表紙をつけるようにしましょう。表紙がない文書であれば、例えば机の上に置いてある状態で、(社外、社内を問わず)説明する相手ではない人が本文を見る可能性があります。特に、波及性が大きく、大きな影響があるクレームの考え方を第三者がみることは避けるべきです。

見解書の構成

見解書の構成は、下記の通りです。

  1. 表題
  2. 作成部門
  3. 挨拶文
  4. 本文
    4.1.概要(結論)
    4.2.検討方法および結果
    4.3.測定結果
    4.4.結論

1.表題(タイトル)

表題を見て、この見解書は何が書かれてあるのかがわかるようにしましょう。
「〇〇について」、「〇〇の件」といった表題は、中を読まなければ何が書いてあるのかわからないので望ましくありません。
「製品型式〇〇の××故障の原因と対策の検討結果」、「製品型式〇〇の××故障の再現試験結果」、「〇〇の××故障の原因と波及範囲調査結果および対策」などと記載し、表題に記載してあることを見解書で説明しましょう。

2.作成部門

見解書は、実際に検討した部門が作成します。お客様宛の社外文書ですので、適切な部門長(部長)が承認します。作成部門所属の課長が照査し、お客様との説明は課長または課長代理が行います。

3.挨拶文

挨拶文は、通常の社外文書と大きく変わりません。例文は以下の通りです。


文書番号:XXXXXXX
202x年○月○日

株式会社 〇〇 ××部部長
見本 太郎様

株式会社 △△ △△事業部
品質保証部 部長 〇山 次郎

製品型式〇〇の××故障の原因と対策の検討結果

拝啓 〇〇の候、貴社ますますご繁栄のこととお喜び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、先般より御社〇〇装置において、製品型式〇〇で××故障を発生させ、ご迷惑をおかけしましたことを深くお詫びいたします。不具合を生じた原因につきまして、当社の調査結果と対策をご報告いたします。
 ご査収のほど、よろしくお願いいたします。

・・・・・(本文へ続く)・・・・・


4.本文

見解書の本文に必要な記載項目は以下の通りです。

  • 事前にお客様からの検討依頼事項がある場合、その回答
  • 結論の概要

挨拶文から結果の概要までを、1ページで記載すると、1ページ目だけを見て、今回の見解書の概要がわかります。

4.1.調査結果(詳細)

2ページ目は、調査結果詳細です。

  • 目次
  • 不具合対象製品(型式番号、ロット)
  • 故障内容
  • 処置経過
  • 調査結果
     調査製品
     故障部位の観察結果
     故障のしかた
      (故障部位の強度、考えられるストレス、部品の消耗度合い、FT図など)
     故障原因を、再現試験などで確認する
     対象製品の製造履歴と処置
  • 再発防止策
調査結果の注意事項

以下の点に注意して本文を記載しましょう。

  • 調査結果は事実のみを記載すること。作成者の意見は含めない。
  • できるだけ簡潔に記載する。詳細説明が長くなる場合は、添付資料にする。
  • 形容詞を使う場合は、必ず数値化して具体的に記載する。
  • 図や表にできるものは、図や表にする。文章での説明は最小限にする。
  • 専門用語や略語は必ず解説文を入れる。
  • 原因は短く記載する。
  • 原因が明確になっていなければ、再発防止をすることができないため、原因を明確にする。
  • もし原因が明確になっていない場合は、詫びた上で、今回の報告を途中経過報告として説明し、次の調査方法を提案し、いつまでに次の報告(最終報告)をするかを明記する。
  • 故障のしかたは、故障の起点部位の写真を示す。起点となる部分にかかる考えられるストレスを整理して、故障事象を「故障部位にストレスがかかって、どうなった」と表現する。
  • FT図は故障事象が発生する条件を論理記号を使って整理する。(内部リンク FT図参照)
  • FT図によって故障原因を明確にしたのち、可能な限り再現試験をして確認する。
  • 故障部位の強度が弱かった場合は、その原因を明確にする。製造上または部品の問題である場合は、製造履歴を明確にする。問題のある製造履歴の製品がどこにあるのかを調査し、交換などの処置をする。稼働中である場合はなるべく早く処置をする。
  • 故障の仕方は、初期故障なのか、偶発故障なのか、摩耗故障なのかを分析する。

再発防止策

問題となっている不具合に対し、FT図などで原因の候補を示し、その中から故障原因を特定して、再現試験まで実施できたら、原因の分析は十分です。その原因に対して、再発防止策の案を具体的に提案します。再発防止策は、今後同じような問題を起こさないようにする方策です。
再発防止策は、お客様に納得していただいた上で実行しましょう。再発防止策による変更が大きい場合は、変更によって別の問題が起こらないことも確認してください。変更点による問題が発生しないことを示すには、FMEAなどの方法が有効です。

処置の提案

再発防止策が実行されるまでの間、故障現場で、故障した製品をどうするのかを記載します。お客様は製品を使用していたので、代品の貸し出しなどなければ、お客様に迷惑をかけることになってしまいます。
具体的には、まず故障した製品の代品を納入しましょう。また、お客様への出荷履歴を整理し、工場で稼働中の製品のシリアル番号などを一覧表にしておいて、今回の不具合と同じ原因が内在していないかを確認しておきましょう。お客様の工場で同じ不具合が発生する可能性があれば、その製品に対しても代品を用意しておくと良いでしょう。
代品には、今回の不具合と同様な欠陥がないことを必ず確認しておきましょう。代品が同じ原因の故障を起こしてしまっては、信用を失ってしまいます。

まとめ

故障の謝罪は、挨拶文で実施しているので、まとめでのお詫びの言葉は必要ありません。本文書は見解書であり、故障原因と対策の説明が目的ですので、まとめでも故障原因と説明について述べましょう。

(例文)今回の不具合の原因は××でした。その対策は〇〇を実施することによって、今後同様の問題は発生しないと考えております。
今後とも、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いしいたします。

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